精油と錬金術

(里山に住み始めもうすぐ10年。改めて、地球のお庭や里山での暮らしについてその10年を振り返り、自然から得た知恵について綴っております。第1回は地球のお庭のはじまり、こちらのブログは第3回嗅覚という特別な感覚の続きです)

前回は嗅覚には特別なことがたくさんあるというお話、嗅覚と記憶の結びつきのお話しをしました。

今回は、「自然の恩恵である精油だからこそ香りを観る体験ができる」ので、精油とは何かについて掘り下げてみたいと思います。

精油とは何か?

精油とは、物質的に見ると、芳香植物から芳香成分のみを集めた芳香成分の集まりです。一本の精油の中には数百種以上の芳香成分が含まれています。

メディカルアロマを学ばれた方は、たくさんの芳香成分とその作用について覚えられたことと思います。

アロマテラピーの権威ドミニック・ボデュー博士は、「精油とは植物に流れている血液のようなものです。この中に、著しい効果を生み出す特性が含まれています。一つ一つが特有の効能を持ち、人間のエネルギーを生み出す体内の、目に見えるところも、見えないところも同時に改善してしまう、生きた自然の力です」と述べておられます。1998年芳香療法集中講座(ドミニック・ボデューセミナー)より

ロバートティスランドは、「エッセンスは、人間でいえば血液のようなものです。エッセンスは植物体そのものではなく、それ自体が全体的な有機物なのです。・・・・エッセンスは植物の個性あるいは魂のようなものです。エッセンスは植物のもっとも霊妙不可思議な成分です」<芳香療法>の理論と実際 アロマテラピー ロバート・ディスランドより p4.

まとめると、精油はただの芳香成分の集まり(物質)ではなく、人間の目に見えるところも見えないところにも作用する、植物の個性、魂のようなものであり、精妙なものということ。

精油はエッセンシャルオイルとも呼ばれますが、もともとエッセンスという意味は、本質的なもの、精髄、真髄というような意味があります。

精油は生きており物ではないということは、精油を扱う上でとても重要なポイントです。

精油をどのような意図と認識で扱うのか、使い手の意識というのは、精油の力をどれだけ引き出せるかに影響してきます。

当然、物質として精油を扱うのならば、それだけの効果でしかありません。

私は、精油は自分が自分らしく人生を創造するのを導いてくれる存在と思っています。

精油の蒸留と植物の生命力

精油とは何だろう?植物の生命力ってなんだろう?

その答えのヒントになったのが、水蒸気蒸留法です。ほとんどの精油は水蒸気蒸留法によって抽出されます。

その原理は、蒸留窯に原料植物を入れて、水を加熱した蒸気をくゆらせます。
原料植物の油胞が弾けその中の精油成分が蒸気と一緒に上がっていきます。それを冷却管で冷やすと、液体となり精油と芳香蒸留水(ハーブウォーター)が抽出されます。

ある日、自分の庭で取れたハーブを使って初めて蒸留したとき、取れたハーブウォーターや精油よりも、蒸留した後の植物の残骸に衝撃を受けました。

その植物の残骸は香りが完全に抜けて、まるで魂の抜けてしまったようだったのです。それは植物の体、物質の死だと思いますが、植物の魂は「精油」という私たちを完全な状態に導く(エリクシル)に姿を変えたのだとその時思いました。

錬金術と精油

水蒸気蒸留法は、アロマテラピーの歴史で登場するイブンシーナ(錬金術師でもあり医師でもある)が確立したといいますが、錬金術は植物療法に深くつながっています。

精油は、錬金術から生まれた、植物の精(生命)そのものといえます。

錬金術というと、卑金属から金を作る黄金変性が有名です。

錬金術では卑金属は不完全なもの、金は完全なものと考えられていました。また病気も不完全な状態であると考え、完全な不老不死の状態、万能薬(エリクシル)を作ろうとしていました。

錬金術は、魔術的なイメージや、もしくは「黄金」を「お金」と結びつけ、お金儲けのイメージも多いのかもしれません。

私は、錬金術は魔術的なものでも、お金儲け的なものでもなく、自然界のしくみにつながる叡智が見いだされるものとしてとらえています。

私の勝手解釈ですが、錬金術とは、自然界の秩序・法則を理解し、精(生命力)そのものに触れ、完全(満たされた状態)な自分を思い出すことと感じています。

実際のところ、錬金術がどのようなものであったのか、詳細や真実はよくわかりませんが、錬金術は、科学的、非科学的という二元論を超えて、実は万能薬(エリクシル)を作ることができているのではないでしょうか。

「金」というのは、自分自身の本質そのものを表しているのかもしれません。

その「万能薬である精油」は使い手の視点によって、万能薬にもなれば、リラックスのためだけ、ただの薬理作用をもつ物質としてにとどまります。​

私がレッスンでお伝えしたいのは、精油や植物自体が、自分自身の本質を引き出し、輝く人生を創造していくことのできる万能薬であるということ。

そして万能薬に変えていくのは私たち自身であるということです。

そして、もちろん、アロマテラピーでは精油をたくさんの方法で用いることができるのですが、自分に向き合い、自分の人生を創造していくための本質的な方法としては、香りをじっくりと「嗅ぐように観る」方法と思い「香りを観るレッスン」を行っています。

ヤロウを使ったチャクラオイル

次回は「香りを観る」というその具体的なその方法について述べたいと思います。(また遠回りはするかもですが)

土屋いづみ

植物観察家:植物の言の葉を読む人。夫と猫4匹と里山で暮らし。
里山に生えている植物や、地球のお庭と名付けた畑で植物を観察しながら、自然の叡智につながる植物観察講座、四大元素と植物観察、里山薬草学、植物から学ぶフラワーエッセンス講座などをお伝えしています。日々のレッスンの様子は、インスタとFacebookをチェックくださいね。
「植物の色・形・ふるまいには意味がある。植物を対話するように観察すれば、精妙な感性や本質を観る目を養う。植物、人間、宇宙のつながりを知る古からの学びや植物との共鳴を通じ、自分と自然の叡智に触れる。」

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