香りを観る

(里山に住み始めもうすぐ10年。改めて、地球のお庭や里山での暮らしについてその10年を振り返り、自然から得た知恵について綴っております。第1回は地球のお庭のはじまり、こちらのブログは第4回精油と錬金術の続きです)

前回は精油とは何か?というお話をしてみました。アロマテラピーは芳香療法ですが、香りを嗅ぐのではなく「観る」ということをHerbal Medicineでは大切に考えています。

今回は香りを観るとはどういう意味なのかについてと、実際に香りを観る方法についてお話していきます。

「香りを観る」という意味

香りを嗅ぐのではなく「観る」。観るとはいったいどういう意味でしょうか?

あえて香りを「観る」という漢字を用いています。「観る」とは「見る」とは違います。

「観る」は観察、観戦、観賞、観光などにも使われるように、目に入るものだけを見るのではなく、集中してみたり、芸術、景色、観光地など自然のものを広く俯瞰し、視野を広げるためにみるときなどに使われる漢字です。

観音さまにも「観」という漢字が使われています。観音様とは「観世音菩薩」の略で、観世音とは「世の音を観る」という意味があります。

世とは世人、すなわち私たち生きているものすべてのことで、私たち生きているものすべての声を観るという意味になります。

声を聴くのではなく、「声を観る」という言葉が使われているのが興味深いですね。

一般的に音は聴くわけですが、観音様はさらに一歩進んで音を観ているということです。

音を聞くというのは、物質的な音を物質的な聴覚によってとらえることを言うのですが、「音を観る」とはその音(声)の本質を洞察することを言います。

香りも同じです。嗅ぐことの一歩向こう、香りという刺激を通じて映し出される私たちの本質を洞察することを言います。

「香りを観る」のは自分自身の感じていることに耳を傾ける静かな時間になります。

また、精油を成分から直線的に捉えるのではなく、多面的に立体的にエネルギーも含めて精油を捉える訓練になります。

古代蓮

香りを観るのに必要なもの

精油(原液でも大丈夫ですが、可能ならば植物油で希釈したものが好ましい)、ムエット(試香紙)、スケッチブック、色鉛筆をご用意ください。

まず、実際に香りを観る前に準備として必要なことを以下に述べます。

1.質の高い精油を用いる

精油はこれまでお話してきたように、単なる成分の集まりではありません。質の高い精油というのは、植物の「生命」や「エネルギー」を感じるものです。

100%天然で、混ぜ物や成分の除去がないものをアロマテラピーショップ専門店で購入されてください。

アルコールに希釈されたものや、いわゆる「フレグランスオイル」「ポプリオイル」とは違います。

遮光瓶に入ったもので、植物の学名、抽出部位、原産地、蒸留年月日やロット番号が記載されているもの、農薬や酸化防止剤などが含まれていないことが成分分析表などの添付によって証明されているものなどがおすすめです。

2.香りの濃度

厳密に、どれくらいの濃度で嗅ぐと良いか、人によっても心地よさや感じ方が違いますので、試しながら行う必要があります。

基本的に、濃度が濃いものは肉体や意識に作用し、薄いものはエネルギーや無意識に作用します。

一般的に無意識に働きかけたいときには、精油原液よりは植物油などに希釈したものをムエットにつけて香ります。

意識できるかできないかくらいの濃度で香ったほうが香りを観やすいと感じられる方も多いです。

植物油に薄めて準備をします。

3.ムエット(試香紙)を用いる

ムエットとは、試香紙のことです。精油の香りは、直接瓶から嗅ぐのではなく、必ずムエットにつけて嗅ぎます。

精油の香りを直接瓶から嗅ぐのは強すぎる香りの刺激になります。

ムエットを使うと、ご自身にとって心地よい距離感で、香り全体を確かめることができます。

ムエットの先端に香りをつけ、その反対側を持ち、胸の前でムエットを振りながら、鼻に近づけ、心地よい距離で香ります。

4.呼吸やストレッチ

香りと向き合う前に、ストレッチや呼吸法を行い、リラックスしましょう。ストレッチは、肩などの緊張をほぐしたり、首、手首、足首など、「首」とつく部分が滞りやすいので、そのあたりを心地よく緩めます。

呼吸法については、様々なものがあると思いますが、ここでは、アメリカの医師アンドルー・ワイル博士が提唱している呼吸法「478呼吸法」をお伝えします。

この呼吸法は「くつろぐ呼吸法」として知られ、神経を鎮静させ、リラックス効果を得られる方法として知られています。

普段もストレスや緊張の軽減、寝付けないとき、気持ちを落ち着けたいときなどに行うことができます。

とても簡単なのでやってみてください。

まず、座位か仰向けの楽な姿勢をとり、前歯の裏側の付け根のあたりに舌先を当てます。こうすることで体がリラックスした状態にすることができます。それから、息を口から「フー」と吐き切り、次のステップに進みます。

①鼻から息を吸う(4拍カウント)
②息を止める(7拍カウント)全身に酸素をいきわたらせることをイメージ。
③口をすぼめ細く息を吐き切る(8拍カウント)「ふぅーーー」と音を立てながら行う。

①~③を4回繰り返して終了です。1日に2回ほど実践すると良いです。

リラックスするための呼吸で息苦しくなってしまっては意味がないので、自分で気持ちいいと感じる速度でカウントしても大丈夫です。リズムが一定であることがポイントです。

5.直感で精油をひいてみる

ストレッチや呼吸法の後、まずは、1本の精油の香りと向き合ってみましょう。

精油をどれくらいの本数お持ちかは、それぞれかと思います。

もし、複数の精油をお持ちであれば、その中から一本の精油を選ぶわけですが、その選び方としては、その香りを嗅いでその日の気分で好みの香りを選んだり、効能を考えたり、好きか嫌いかで選ぶのではありません。

それが何の精油であるかという名前や識別は脇に置き、精油が入っているボトル全体から醸し出されている雰囲気(エネルギー)に意識を向けます。

もちろん、精油に名前が書かれているので、それが見えてしまうことにはなりますが、俯瞰的に見るようにし、なんとなく気になる精油、なんとなくこの精油に呼ばれているかも!と感じるものを選びます。

6.テーマを決める

何のために、香りと向き合いたいのか、テーマがある方はそれを意図し、精油を選択されると受け取ることもより具体的になります。選び方は「5.精油を直感で選ぶ」と同様です。

香りを観る手順

①ストレッチや呼吸法でリラックスする。

②直観で精油をひく

③ムエットに香りをつける。

④心地よい距離感でその香りを嗅ぐ。もし、その香りがどうしても受け入れられない場合、別のものを選択いただいても大丈夫です。

その香りが何の香りであるかなど分析的に嗅ぐのではなく、その香りに心地よく身をゆだね、香りと一緒にいるような感覚や丸ごと味わうような感覚で、香りの存在を大切にするように嗅ぎます。

④香りを嗅いだ時に浮かんでくるイメージや体の感覚にできるだけオープンになりましょう。嗅ぐように観、観るように嗅ぎます。

浮かんでくるものに、良い、悪いなどの判断をせず、香りが伝えてくるかすかな感覚に耳を傾けます。

一つの感覚が感じられてきたら、そこに注意を向け、それを表すしっくりとくる言葉やイメージを待ちます。

なんとなくこんなことを言っている気がするという感覚で受け取ることもあります。

感情がわいてくることもります。そんな時には、自分に対して、「そんな感情を感じているのだね」と認めていきます。その感情の隣に座っているような感じで受けとっていきます。香りを嗅ぎながら、感情が変化していくかもしれません。

何かを無理に感じようとする必要なありません。何も感じなくても大丈夫です。それも体験の一つです。まずは心地よく、一緒にいる感覚を大切にしましょう。

⑤香りの体験を十分に味わい、その体験を「終わってもよい感じ」がしたら終了します。香りが与えてくれた体験、時間、そして自分の内側に感謝を伝えます。

⑥香りが伝えてきたことをスケッチブックに記録します。右脳の感覚を大切に、色鉛筆などを使い、絵などで記録すると良いです。香りと一緒にいることで変化した感じも、イメージとして表し、記録していきます。

ふっと浮かんでくるイメージ

香りを観る体験を繰り返す

香りを観る体験は、普段の香りを嗅ぐとは違う感覚です。繰り返し経験することで、体験が深まります。香りから受け取れる情報量も増えていきます。

香りからのメッセージ

受け取った香りからのメッセージは、すぐに左脳的に解釈することをしないようにします。

その時には意味がわからなても、日常の中で、ふと「腑に落ちる」感覚で、受け取ったメッセージの意味を理解することがあります。

次回は香りからのメッセージについてお話したいと思います。


土屋いづみ

植物観察家:植物の言の葉を読む人。夫と猫4匹と里山で暮らし。
里山に生えている植物や、地球のお庭と名付けた畑で植物を観察しながら、自然の叡智につながる植物観察講座、四大元素と植物観察、里山薬草学、植物から学ぶフラワーエッセンス講座などをお伝えしています。日々のレッスンの様子は、インスタとFacebookをチェックくださいね。
「植物の色・形・ふるまいには意味がある。植物を対話するように観察すれば、精妙な感性や本質を観る目を養う。植物、人間、宇宙のつながりを知る古からの学びや植物との共鳴を通じ、自分と自然の叡智に触れる。」

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